TCFD の情報開示内容~企業に求められるスコープ 3(scope3)の温室効果ガス排出量開示 についてご紹介!~
今回は「TCFD の情報開示内容~企業に求められるスコープ 3(Scope3 )の温室効果ガス排出量の開示についてご紹介!~」と題しまして、 TCFD のスコープ 3 について具体的に解説いたします。
1.TCFDで求められる情報開示内容
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、G20より要請を受けた金融安定理事会(FSB)が設置したものであり、企業が気候変動に関連するリスクや機会をどのように評価しているかを開示することを推奨しています。
TCFDは11の開示項目を提唱しており、それらは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つのカテゴリーに分類されます。なかでもGHG排出量の開示は、企業が排出する温室効果ガスの量を測定し、削減するための目標を設定することを求める「指標と目標」のカテゴリーに該当し、その発生源によって3つの範囲に分類しての開示が求められます。
TCFDに基づく情報開示として必要な項目 | ||
ガバナンス | 気候関連のリスク及び機会に係る 組織のガバナンスを開示 | a.取締役会による監視体制の説明 |
b.評価・管理する上での経営者の役割を説明 | ||
戦略 | 気候関連のリスクと機会が もたらす事業、戦略、財務計画への影響の開示 | a.短期・中期・長期の気候関連リスクと機会の説明 |
b.リスクと機会が組織のビジネス、戦略、財務計画に及ぼす影響の説明 | ||
c.気候シナリオを考慮した戦略のレジリエンスの説明 | ||
リスク管理 | 気候関連リスクにおける 識別、評価、管理状況について開示 | a.リスクを識別および評価するプロセスの説明 |
b.リスクを管理するプロセスの説明 | ||
c.リスクを識別・評価、管理するプロセスが総合的なリスク管理に どのように統合されているか説明 | ||
指標と目標 | 気候関連のリスクと機会を評価および管理する際の指標と目標の開示 | a.戦略とリスク管理プロセスに即して、リスクと機会を 評価するために用いる指標の開示 |
b.スコープ1,2,3のGHG排出量を開示 | ||
c.リスクと機会を管理するために用いる目標の設定および目標に対す る実績の説明 |
出所)環境省 地球温暖化対策課 2022年3月 TCFDを活用した経営戦略立案のススメ ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2021年度版~を基に船井総合研究所にて作成 各スコープの概要については以下の通りです。
- スコープ1:企業が直接的に排出する温室効果ガス(燃料や原料の使用など)
- スコープ2:企業が間接的に排出する温室効果ガス(電力や熱の購入など)
- スコープ3:企業の事業活動に関連して上流や下流で排出される温室効果ガス(原材料や製品の調達、輸送、使用、廃棄など)
特にスコープ3は、企業のサプライチェーンや顧客による排出量も含まれ、企業のGHG排出量の大部分を占めることとなります。
そのためスコープ1、2と異なり、これらのデータを収集するには複数の企業と協力し排出量データを集め、可能な限り可視化できるようにしていかなければなりません。 出所)環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html
2.スコープ3の開示の重要性
スコープ3は、企業のサプライチェーンや製品の使用・廃棄による間接的なGHG排出量を示す指標です。この指標の重要性は、企業が気候変動に対して包括的かつ継続的な取り組みを行うために欠かせない要素となっています。以下にその重要性をあげます。
(1) リスク管理:スコープ3の開示により、企業は自社のビジネス活動に関連するリスクだけでなく、サプライチェーンやに関連するリスクも把握できます。これにより、リスク管理の向上と将来のリスクに対する適切な対策が可能となります。
(2)持続可能性への対応:スコープ3の開示は、企業が持続可能性の観点からビジネス戦略を見直し、削減目標の設定などの取り組みを進めるきっかけとなります。これにより、企業の競争力やブランド価値を向上させることができます。
(3) ステークホルダーとの関係強化:スコープ3の開示は、投資家や顧客、地域社会などのステークホルダーとの信頼関係の強化につながります。ステークホルダーは企業の気候変動リスクへの取り組みに関心を持っており、透明性のある情報開示を求めています。スコープ3の開示により、企業は気候変動に関連するリスクや機会について正確かつ包括的な情報を提供し、ステークホルダーとのコミュニケーションを強化することができます。
3.スコープ3のカテゴリー
では、実際どのような項目の開示が求められているのでしょうか。
以下はTCFDによって定められたスコープ3の温室効果ガス排出に関する15のカテゴリーとその説明を表す表です。
これらのカテゴリーは企業が直接コントロールしていない、つまり間接的な温室効果ガス排出をカバーしています。
スコープ3のカテゴリー | 該当する活動(例) | |
---|---|---|
1 | 購入した製品・サービス | 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達 |
2 | 資本財 | 生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設製造が終了した最終年に計上) |
3 | スコープ1,2に含まれない | 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等) |
燃料及びエネルギー活動 | 調達している電力の上流工程(発電に使用す津燃料の採掘、精製等) | |
4 | 輸送、配送(上流) | 調達物流、横物物流、出荷物流(自社が荷主) |
5 | 事業から出る廃棄物 | 廃棄物(有価物のものは除く)の自社以外での輸送、処理 |
6 | 出張 | 従業員の出張 |
7 | 雇用者の通勤 | 従業員の通勤 |
8 | リース資産(上流) | 自社が賃借しているリース資産の稼働 |
(算定・報告・公表制度では、ソコープ1,2に計上するため、該当なしのケースが大半) | ||
9 | 輸送、配送(下流) | 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売 |
10 | 販売した製品の加工 | 事業者による中間製品の加工 |
11 | 販売した製品の使用 | 使用者による製品の使用 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 使用者による廃棄時の輸送、処理 |
13 | リース資産(下流) | 自社が賃貸事業者として所有し、他社に賃貸しているリース資産の稼働 |
14 | フランチャイズ | 自社が主宰するフランチャイズの加盟社のスコープ1,2に該当する活動 |
15 | 投資 | 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用 |
その他(任意) | 従業員や消費者の日常生活 |
出所)環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html
4.スコープ3の算定に関して
スコープ3の算定方法の一般的な手順は以下の通りです。
・ステップ1:カテゴリーの選択
まずは、該当する排出カテゴリーを選択します。カテゴリーは、出張、輸送、製造物資の調達、取引先/顧客へのサプライチェーンの影響など、先に述べたように15のカテゴリーに分類されています。これは、企業がリスク管理と炭素削減の重点を置くスコープ3の種類を正確に把握するために必要となります。
・ステップ2:データの収集
選択した各カテゴリー毎にデータを収集します。企業内の各部門や取引先といった関係者から必要なデータを収集することが求められます。
・ステップ3:排出係数の適用
収集したデータに基づいて排出係数を適用します。排出係数とは、単位ごとの温室効果ガスの排出量を算出するための係数であり、各産業やカテゴリーごとに異なります。つまり、収集したデータを選択したカテゴリーに応じた排出係数を乗じることで、単位ごとの排出量を算出します。
・ステップ4:GHG排出量の報告
排出係数を用いてGHGの排出量を計算し、報告します。GHG排出量を報告することで、企業の環境負荷についての透明性を高めることができます。報告には、適切な精度や範囲の明示、また報告書の可視性などが求められ、慎重な取り組みが必要です。
5.船井総研のスコープ3算定サポート
いかがでしたでしょうか。
今後、TCFDに基づく情報開示の要請が、プライム上場企業に留まらず、スタンダード上場企業、グロース上場企業へと広がっていくことは間違いないでしょう。
また、Scope3を指標として開示する企業が増えつつある中、TCFDにおけるScope3の開示も、より一層求められていくことが予想されます。
しかし、多くの企業様では、TCFDに基づく情報開示およびScope3の算定に対して、十分な知見を持った人材やリソースが不足しているのが実情かと存じます。
GX・脱炭素経営.comを運営する株式会社船井総合研究所では、TCFDに基づく情報開示のコンサルティングやScope1~3のGHG算定のコンサルティングを行っております。
弊社が提供するTCFD対応のコンサルティングの詳細は下記をご覧ください。