脱炭素に取組んでいる、チャレンジをしてみようという皆様において、必ず目にしたことがある「TCFD」という水色のロゴマーク。「大手企業が取り組むものであり、中小企業においては少し遠い存在…」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
今回は、TCFDについて…
・そもそも、どのようなものなのか?
・中小企業においては掴みようのないものなのか?
という点に重きを置きながら、お伝えをしていきたいと思います。
大企業の皆様におかれましても、“他社の取組を参考に進めていくTCFD”から“理解をして進めていくTCFD”に変わるお手伝いになれば幸いです。
では、進めてまいりましょう。
1.TCFDは2023年10月で解散?これからはどうなる?
早速ではありますが、TCFDは2023年10月をもって解散となりました。大前提として、TCFDは規格認証の名称ではなく、団体名です。「将来のリスク・機会を適切に認識し評価しているかという情報は金融市場(資本の再分配)には重要である。」「気候変動によるリスク・機会は、今後より色濃くほぼ確実に表れるものである。」そのような背景から、TCFDは気候変動によるリスク・機会を適切に企業の情報開示に織り込めるよう提言を繰り返してきました。
このTCFDの提言は「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの要素から構成されています。日本国内においては上場企業(プライム市場)において、「TCFD提言に対する回答」を求められています。
(引用 株式会社東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード 2021年6月11日)
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。(引用終)
そのようなTCFDですが、2023年10月に「2023年状況報告書」の発表とともに解散。
FSB(金融安定理事会)がG20の要請を受けて立ち上げたTCFDは、IFRS(国際会計基準)財団が2021年11月に設立した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の取組みを歓迎しており、実質的に今後はISSBの基準が主になってくることが予想されます。
(このISSBの開示基準等について別の機会にて)
2.TCFDは未来のリスクをしっかり認識するためのフレームワーク
今回の本題はここからです。
さて、当事者として「TCFDの提言に対する回答」を考えると…
- 報告事項を作らなければならない
- GHG排出量を計測しなければならない
- 未来の予想を作り、算定しなければならない
ということを想定されるかと思います。確かに間違っていないのですが、TCFD提言の最終報告書を見ると色々な気付きを与えてくれます。
まず、前提としてあることは
- 適切な資本分配を目的としていること
- 金融危機(感染症拡大)のような予想外の出来事は起こり得る
- その予想外の出来事に対して、自社がどの程度影響を受けるのかも、投資家にとっては必要な情報である
- 気候変動は既に予想外ではなく、ほぼ確実に起きる未来である
ということです。
しかし、この気候変動をどう予測するのか?
ガイドラインを設定しなければ、あらゆる情報が氾濫し、投資家たちは適切な判断ができず、適切な資本分配は実現しなくなります。そのうえで、どうやってリスクを認識し、対外的に公表すべきかを示唆したのがTCFDの提言であり、前述「コーポレートガバナンス・コード」に記載されたために(世界中でもそうです)共通言語として認識されるようになったというのが現段階です。
同時に開示対象が投資家であるということから、非上場企業においては遠い存在(というより、もっと手元に取り組めるものがある)になっているというのが実情かと思います。
3.中小企業におけるTCFDへの向き合い方は
「さて、それを中小企業はどう向き合えばよいのか?放っておいてもよいのではないか?」
その答えは「No」です。確かに、現段階において求められていないというのは事実ですが、将来それが全企業の統一基準になる可能性もあります。ただ、それ以上に、一部でよいので取り組むことをお勧めします。具体的には「リスク認識」と「ビジネスチャンスの発見」です。
①リスク認識
2019年時点、新型コロナウイルス感染症の影響が大きくなり、甚大な被害を生み出すとは予想できませんでした。ただ、それは実際に起きてしまいました。(TCFD提言では金融危機を例示しています)要するに、予想しきれないことが起きてしまう世の中であるということです。
それを気候変動に置き換えてみると、どのような事項が考えられるでしょうか。TDFD提言では様々なリスク要素を定義していますが、その中でも「物理的リスク」と呼ばれる部分は、将来の投資のために認識をしておくべきでしょう。
具体的には…
・豪雨災害で水害被害を受けてしまった(河川の氾濫など、これはいつでも有り得る)
・河川付近に建てた事務所が2050年ころに海面上昇で水没する(今から30年後なら十分有り得る)
・毎年上がる平均気温、エアコンのついていない作業場で熱中症が発生(もう起きているかも) 等々
上記のようなものが挙げられます。こういったリスクに対して自社が該当するのか、仮に起きてしまった場合は幾らのお金を要するのか。今後も事業発展を志す企業において、この部分を認識しておくことは大切といえます。
②ビジネスチャンスの発見
TCFDはネガティブなことだけではなく、気候変動における「機会」についても言及をしています。例えば…
- 顧客の環境意識の向上による新たな商品ニーズの創出
- 物流の脱炭素化の流れにのっとりモーダルシフトを行い、コスト削減を実現
- 上記のリスクへの対策をBCPとして設定することで顧客からの信用力向上 等々
上記のように、TCFDにおいては「気候変動によって、このようなビジネス上の機会も生まれる」という項目も定義されています。それらを参照しながら、ビジネスチャンスを見つけ出すこともTCFDの一つの活用の仕方といえます。
(環境に対する認識は日々刻々と変わっています。執筆当時に認識です。)
4.船井総合研究所がサポートできること
ここまで「中小企業におけるTCFDへの向き合い方」ということについてご提案させていただきました。
船井総合研究所では“脱炭素のスモールスタートとしてのTCFD対応”から“TCFDに基づく情報開示”まで支援をさせていただいております。環境領域は人により知識・認識の差が大きいものです。社内において共通認識を作るための研修から、具体的な取組み・ハンズオン支援まで対応可能です。お気軽にご相談ください。
▼TCFD対応支援の詳細はコチラ▼