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脱炭素コラム

2024年5月13日にGX実行会議実施、GX2040ビジョンの策定に向けて

GX関連の国策を推進している会議体が「GX実行会議」です。そのGX実行会議が2024年5月13日に第11回が実施され、今後の国の脱炭素施策に関して、様々な議論が行われました。今回の議論は「GX2040ビジョン」の策定に向けたものです。

GX実行会議は2022年7月に第一回目が開催され、「日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策」「それを前提とした、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップの策定」を目的として行われていた会議です。

第11回では、これまでのGXの進捗状況を踏まえたうえで、GX2040ビジョンについて、議論のポイントについて示された会となっています。GX実行会議 第11回 資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai11/index.html

1.これまでのGXの進捗状況について

これまでのGX対応について、以下のような議論が行われ、施策として進められています。

(1)分野別投資戦略の策定:16分野における今後10年程度のGXの方針を提示
(2)排出権取引(GX-ETS)やGX市場創造に向けたルールメイキングを行う場としてのGXリーグ
(3)「成長志向型カーボンプライシング構想」の制度構築が進むと同時に、GX経済移行債の発行(GXの投資領域への投資財源の確保) 等々

①分野別投資戦略の策定
16分野における脱炭素・GXの方向性を示したものであり、第10回GX実行会議(2023年12月15日開催)にて案として提示されていたものになります。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai10/siryou2.pdf
16分野に関しては、以下の領域を指定されており、各分野とも「現状分析」「GX先行投資の方向性(テーマ)」「GX市場創造(にむけたルールメイキングのポイント)」「先行投資の方向性(これは排出削減の観点と産業競争力強化の二つの観点より組成)」「スケジューリング」の項目から構成されています。
・鉄鋼 ・化学 ・紙パルプ ・セメント ・自動車 ・蓄電池 ・航空機 ・SAF ・船舶 ・くらし ・資源循環 ・半導体 ・水素等 ・次世代再エネ ・原子力 ・CCS
各分野における国の長期・複数年度コミットメントによる補助金、生産・販売量に応じた税額控除といった記載がされているものとなり、各産業のGXの方向性について提示されています。

②GXリーグ
GXリーグは、24年度から747者が参画するGXリーグ基本構想により設立された団体です(船井総研ホールディングスも参画)。参画企業のリーダーシップを持った参加を通じて、カーボンニュートラルに向けた社会構造変革のための価値を提供するものであり、自主的な排出権取引の場、市場創造のためのルールメイキングの場として機能しています。
国内の温室効果ガス排出量の5割以上を本参画会員が占めており、事業者側が能動的に協業し、機能するルールを作る場として期待されています。また、今後、一定規模以上の排出を行う企業の参加義務化、削減目標の認証制度の創設等も議論されています。

③「成長志向型カーボンプライシング構想」「GX経済移行債」
今後10年間で150兆円の官民脱炭素投資を生み出すための呼び水としての20兆円がGX経済移行債です(2024年2月に世界初の国によるトランジション・ボンドとして発行)。また、それの償還財源として用いるのが「成長志向型カーボンプライシング」です。
GX経済移行債を用いた技術開発支援、その、財源として将来のカーボンプライシングを利用、新たな生まれた技術を用いて脱炭素を推進していく原動力にしていくという世界観を構築しようとしています。

他にも、項目はありますので、より詳しく知りたい方は冒頭のURLより。

2.GX2040ビジョンについて

2040年に向けた脱炭素化や産業政策の方向性を盛り込んだ新たな国家戦略として「GX2040ビジョン」を構築することとし、その議論がGX実行会議においてスタートされました。

GX2040ビジョンの策定にあたり、与件として以下のような事項が挙げられています。
・不確実性が高まっている
→量・価格両面でのエネルギー安定供給確保について、中東情勢の緊迫化や化石燃料開発への投資減退等要因
→DXの発展によりデータセンターの必要性など電力需要の増加が見通される中、その規模と時期
→国際間における対立などに起因する経済安全保障における懸念とサプライチェーンの再構築のあり方
また、様々なアプローチ手法が可能性として考えられることや、次世代技術への期待の高まりといったポジティブなことについても与件として挙げられています。

そして、GX2024ビジョンの策定に当たっては以下の4つの視点で検討を進めていくとしています。
(1)エネルギー: 強靱なエネルギー供給を確保するための方策/水素・アンモニアなどの新たなエネルギー
(2)GX産業立地: 新たなエネルギーの供給拠点等を踏まえた産業立地のあり方
(3)GX産業構造: イノベーションの具体化、社会実装加速
(4)GX市場創造: 脱炭素の価値が評価される市場造り
上記事項について、6月以降『GX2040リーダーズパネル(仮称)』を開催し、有識者から見解を集めながら策定を進めていくとされています。

諸々の記載はありますが、その中でも気になるトピックを以下に挙げていきます。

■サプライチェーン上の排出量可視化と排出削減要請
2022年において取引先から排出量計測・カーボンニュートラルへの協力を要請された会社は、2020年対比で約2倍(全企業の15.4%55万社程度)に増えているとされています。製造過程の排出量を適用要件とした補助金制度の存在、輸入品に対して同等の負担を課す「炭素国境調整措置」の制度があっての流れと言えます。また、この流れは今後も継続することが予想され、より多く会社へ排出量の可視化や、炭素排出削減要請が行われることとなるでしょう。

■GX価値をめぐる産業界の動向国としても、GX価値が適正に評価される市場の創造が不可欠であると認識しています。市場において「グリーン製品が想定より売れていない」「興味を示している人でも付加価値として対価を払うという感じではない」という声があることは資料でも明記されています。
そのうえで、「グリーン製品は政府補助があることが前提で既存製品と同等価格になる」という発想を転換させ、「GX製品は自社や日本の成長と脱炭素化双方に貢献する貴重なものであり、その価値が付加価値として乗った製品」との発想へ変えていきたいとしています。
その一つの方策として、自社の削減量である排出削減である「削減実績量」や、自社外の排出量を排出削減させることに寄与した「削減貢献量」を捉え、GX価値の見える化、GX価値を持つ製品が選ばれるような市場環境を作っていくことを推進するものとしています。

3.まとめると

国の目標である「2013年度対比2030年度46%、2050年のカーボンニュートラル」というものに対して、2022年度の実績は22.9%であり、進捗率は順調となっています。しかし、その背景には新型コロナ禍といった経済インパクトがあったことや、太陽光発電が一気に広まったということがあります。

これからの脱炭素施策は、投資に対する経済合理性や、DXの進展に伴う更に電力需要が求められていく中で進んでいくものです。技術的イノベーションの促進、有力プレイヤーを巻き込んだ脱炭素推進組織の構築といった施策に合わせ、より具体的な施策を講じることを決めていくのがGX2040ビジョンになるかと思います。その具体的なテーマとして、エネルギーの在り方(供給)、エネルギー利用の合理化(産業立地・産業構造)、脱炭素価値の高付加価値化(市場創造)というものが今回のGX実行会議で挙げられました。

今後、これらの議論はスピーディに進んでいくことが期待されます。また、情報をキャッチし次第、皆様にお伝えできればと思います。ご覧いただき、ありがとうございました。

 

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