中小企業でも必要な脱炭素経営への対応理由 ~加速する脱炭素社会化への動き~
日頃より脱炭素経営への取り組みに関する様々なお声を頂戴します。
・中小企業でも脱炭素経営への対応は必要なのか
・取り組みたいが具体的にどのように取り組めば良いのか分からない
・いいことそうだから取り組みたいがコストメリットはあるのか
・自社の社員に負荷をかけてまで取り組む必要性を感じない
etc…
カーボンニュートラルニュートラルというキーワードはよく聞くし興味はあるが、そもそも脱炭素経営とは具体的に何なのか良く分からず、後回しになっている企業様も多くいらっしゃるのも実態です。
本コラムでは、そもそもなぜ中小企業にまで脱炭素経営が求められているのかについて解説していきたいと思います。
1.気候変動に対する国の方向性
気候変動は単に自然だけでなく、人間社会にも影響を与え、GHGの持続的な排出は、社会経済にも大きなダメージを与えます。国連防災機関が2018年に公表した報告書(※1)では、世界の大災害による保険損害額の調査にて1998年から2017年の気候関連災害の被害額は全体の77%である2兆2450億ドルと報告されています。これは、1978年から1997年の気候関連災害による被害額の約2.5倍(8950億ドル)にあたります。また、国際イニシアチブの一つであるTCFDの2017年最終報告書では、気候変動が金融市場に与える影響は甚大であり、将来(今世紀末までを対象)の悪影響を抑えるために、低炭素社会への移行のための投資(=気候変動への緩和と適応)を今実施していくことの重要性を述べています。
2015年のパリ協定では「産業革命後の気温上昇を2℃未満に抑え、努力目標として1.5℃未満に抑える」ことを掲げました。ここで世界各国が脱炭素社会へと向かうことを社会に発信したのです。
日本は、世界各地でおこる気候変動に対応するため、2030年までに温室効果ガス(以下、GHGと表記)排出量を2013年度比で46%の削減、2050年までにカーボンニュートラル(GHG排出量ゼロ)にすることを表明しています。2050年の脱炭素社会実現と持続可能な経済社会の創出のために、我が国は、GHG排出量の削減や吸収作用の保全及び強化の施策は重要な施策であると捉えているのです。
(※1 Economic Losses, Poverty & DISASTERS 1998-2017)
2.求められるサプライチェーン企業の排出量の把握と削減
では、なぜ中小企業も脱炭素への取り組みが必要なのか。排出量が大きい大企業だが取り組めばよいのではないか。
炭素排出量削減のためにはまず排出量の把握、つまり、算定が必要となってきます。
その算定範囲の対象は、自社が直接排出したGHGだけでなく自社の事業活動に関連するあらゆる排出を合計した排出量も含まれるのです。日本では温対法による算定・報告・公表制度の施工以降、自社の排出量の把握と自社の排出削減に対しての企業責任に対する意識は高まってきました。しかし今後、その対象範囲が事業活動にかかわる全てのサプライチェーン企業に広がります。更に2050年に向けて求められるレベルは、GHG排出量ゼロです。
実際に、国際イニシアチブであるTCFD、CDP、SBT等に回答する際は、サプライチェーン上で発生する自社以外のGHG排出量の数値報告も求められます。
質問例)
(C7.8)貴組織のスコープ 3 全世界総排出量を示すとともに、除外項目について開示および説明してください。
(※CDP 2024年 気候変動質問 7.8より引用)
特にCDPは、結果がA~D-までランク付けされ公に開示されます。投資家たちの判断指標の一つにもなるため、CDP取り組み企業の高評価を取得しようとするモチベーションは高いものであると言えます。
3.有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示
加えて、日本の有価証券報告書のサステナビリティ情報の開示基準となる日本サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、2025年3月に確定基準の公表、2026年に早期適用での一部企業開示開始、2030年より全プライム企業への適用開始の予定となっています。
SSBJは国際サステナビリティ基準(ISSB)と整合性がとれる内容で作成しているものであり、もちろんここでもサプライチェーン上で発生する自社以外のGHG排出量の数値報告が求められます。
SSBJについては今後のコラムで詳しくお伝えしていきたいと思います。
4.まとめると
以上より、気候変動が与える社会経済へのマイナスな影響、国際的な潮流、サプライチェーン全体に対する排出量の削減要請、大手企業のイニシアチブへの取り組み、プライム企業に対する有価証券報告書での段階的なサステナビリティ情報の段階的な開示要請、等様々な理由により、中小企業でも脱炭素への対応が必要なことがわかるかと思います。
5.船井総合研究所として支援できること
船井総合研究所においては、脱炭素を推進していく上でのサポートメニューを準備しています。
脱炭素領域は取り組み方や方向性がガイドラインとして設定されており、その内容を理解して取組まなければ、時に本質からずれていってしまうこともあります。
取組みの理解から好事例の提示、具体的な行動部分までサポートできることが船井総合研究所の強みです。
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