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脱炭素コラム

COP29のポイント これだけは抑えたい“気候資金目標”

今年もCOP29が開催されました。会期中は、複数の議題について同時並行で会議が行われたり、世界各国の省庁や企業、環境関連団体などがそれぞれの取り組みを紹介するパビリオンが設置されます。また、COP29は議題の決議に納得できず途中退席する参加国があったり、会期が延長されたり等、今年も波乱のCOPでした。異常気象多発の多発によって気候変動対策への関心は年々高まるものの、各国の立場の都合上、容易な議決へのハードルは高いと感じます。

本記事では、COP29の重要性は理解しているものの、複数テーマが扱われている中、一体どのように内容把握をしたら良いか悩む方向けに、これだけは抑えてほしいポイントを筆者からお伝えしていきます。

 

1.COP29とは

(1)COP29の概要

COP(Conference of the Parties)  は、生物多様性(COP-CBD)や砂漠化対処条約(COP-CCD)とそれぞれにありますが、本記事のCOPは、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP- Framework Convention on Climate Change)を指しています。COP-FCCCは、年次サミットであり、その主な目的は、条約および京都議定書やパリ協定などの関連する法的文書の実施状況をレビューし、気候変動対策を強化するための意思決定を行うことです。

今年のCOP29は、2024年11月11日から24日にかけてアゼルバイジャンの首都バクーにて開催されました。気候変動対策の進捗状況の確認、パリ協定の目標達成に向けた議論、途上国への資金支援などが主要な議題として、世界のリーダー、代表者、民間のステークホルダーを含む専門家が一同に会し、気候変動に対処するための行動について議論と交渉を行いました。

 

2.気候資金に関する合意

さて本題です。COP29は“Climate finance COP”つまり“気候資金COP”と表されるほど、パリ協定を実行するために拠出される資金である新規合同数値目標(NCQG:New collective quantified goal)について焦点があてられ激しい議論がされました。一時は決議がまとまらずそのまま閉会するのではないかと思われるほどでしたが、会期を当初予定より2日延長してなんとか合意することができました。

 

(1)合意内容

合意文章は、途上国への資金の流れについて、全ての公的及び民間の資金源から2035年までに年間1.3兆米ドル以上の拡大を呼びかける一方で、2035年までに少なくとも年間3000億米ドルに増やしていくことを目標として決定しました。この“年間3000億米ドル”が2035年までの実質的な資金目標です。一部代表団からは合意への称賛がありましたが、自国の気候変動政策において公的資金を重視していた途上国からすると「微々たる額」と言われるほど低い額であり、強い非難をされる結果となりました。

 

(2)背景/資金拠出は「billion(億)からtrillion(兆)へ」

3000億米ドルとみると想像がつかずかなり大きな額に感じられます。なぜ途上国からの不満は絶えないのでしょうか。

そもそも今回の気候資金目標には前段となる目標が存在します。それが2009年(COP15)に掲げられた「先進国合同で途上国に対し2020年までに年間1000億米ドルを動員する」という目標です。その後の2015年(COP21)のパリ協定時には、“年間1000億米ドル”の拠出を2025年まで継続すること、加えて、2024年までに2025年以降の目標を設定する事が定まりました。この“年間1000億米ドル”という目標は当初予定の2020年から2年遅れて2022年でようやく達成されています。

また、気候資金に関する常設委員会(SFC)では、パリ協定を実施するために途上国がどれだけの資金を必要とするのかを特定する気候資金のニーズ特定報告書を4年に1回作成しています。2021年に作成された第一回特定報告書では、途上国の563の報告書等の行動計画をもとに、年約1兆米ドル、2030年までに約6兆米ドルの資金のニーズがあると報告しました。さらに、2024年の第2次ニーズ特定報告書では、費用が提示されている途上国のNDC(国が決定する貢献)98ヶ国2763ニーズの合計金額は2030年までに5.036~6.876兆米ドルの資金が必要であると試算されました。そのため、今回のCOP29で事前に提出されるインプットペーパーではアフリカグループが年1.3兆米ドル、2030年までは累積6.5兆米ドルの動員を提案する等、各途上国グループからは1年あたり1兆米ドルを超える資金の動員・供与が提案されました。

途上国の適応対策や損失と損害対策の行動計画を実施するには公的資金が重要な役割を担います。期限が守られなかった前段の気候資金目標、試算された年1兆ドル以上のニーズ等の背景から、途上国は先進国に対して、強く気候資金に関するコミットを、特にbillion(億)ではなくtrillion(兆)の資金の動員・供与を求めたのです。

 

3.今後の動向

(1)2025年2月までに提出 次期NDC(国が決定する貢献)

気候資金の援助は、国別の削減目標の強化があってからこそであり、両者は表裏一体の関係です。どちらかだけを強化しても気候変動対策は進みません。今回の気候資金目標結果がどのように反映されるか気がかりであるものの、2025年2月までの提出となっている次期NDCは野心的なレベル引上げがなされているかが重要となってきます。NDCは2015年から5年ごとの提出・更新が定められ、2025年提出のNDCは原則として目標年を2035年とすることが奨励されています。既に提出している国は以下のように目標を立てました。

イギリス:1990年比で2035年までに81%削減

ブラジル:2005年比で2035年までに59~67%削減

イギリスはこれまでの1990年比で2035年までに78%削減するという目標を更新しての公表で、1.5度目標に整合した目標をいち早く提示する事で、COP29の目的である「野心的な2035年の削減目標提出に向けた機運の醸成」を先導しました。

 

国際機関のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書(AR6)では、2019年比で2035年までに60%の削減が必要であると公表しており、先進国ならばそれ以上の削減目標を提示することが理想的です。日本は、自国の基準年に合わせると2035年までに66%+αの削減が理想的であるといったところでしょう。

日本では年内にGX2040ビジョンやエネルギー基本計画が策定予定です。NDCの根拠となる計画ともいえる国内政策も見逃せません。

 

 

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