工場の空調に対するコロナ対策
1.ウィズコロナ時代の工場空調について
2020年の春、新型コロナウイルスが日本列島を襲いました。 4月から約二か月間、全国的に緊急事態宣言が発出され一時期の猛威は収まりましたが、ワクチンが開発されていない現在、いつ再び感染が拡大するか分からない状況です。 そこで今後大事になってくるのは「いかにしてクラスターをつくらないか」です。クラスターが発生してしまった場合、業務に与える影響は風評被害も含めると甚大なものとなるでしょう。 しかし事態が完全に収集するまで業務をしないというわけにもいきません。 そこで今回のコラムでは工場内での「空調設備」からの感染について焦点を絞って見ていきたいと思います。 「三密」の観点からみると一般的に工場は「密閉」にあたります。 そのため適切な換気を行えないと感染を拡大する恐れがあります。 感染拡大を阻止するためにも「空調設備」は非常に重要な要因であると言えます。
2.セントラル空調とコロナの拡大に対する影響
一言で空調設備と言っても空調設備にも種類があります。ウイルス感染において大事になってくるのは「個別空調」か「セントラル空調」のどちらの種類か、ということです。 まずこの二つ空調の種類について説明を行っていきたいと思います。 一つ目の「個別空調」は空調を必要とする部屋ごとに空調機が設置されているタイプです。 一般家庭や中規模以下のビルなどで利用されており、特徴としては各部屋ごとにON/OFFや温度の調整、冷暖房の切り替わりができます。 一方の「セントラル空調」とは一か所にある熱源機によって制御されているタイプです。ビルやショッピングモールなど大きい建物にて比較的採用されています。 この二つの空調の一番の違いは、「別の部屋の空気が入ってくるかどうか」です。 というのも、セントラル空調の特徴として、「建物全体を同じ通風経路をつかって空調を行う」という点があげられます。 そうすると仮にウイルスがどこかの部屋に存在した場合、通風システムを介して建物全体にウイルスの拡散が行われてしまいます。
3.セントラル空調に関する拡大事例
では、セントラル空調が感染経路となり感染が拡大した事例があるのかというと、国内での報道は今のところありません。 考えられる理由として感染が一番拡大した3月、4月は空調設備をそこまで必要としない時期であったことがあげられます。 しかし、夏になり空調設備の稼働率があがっていくとセントラル空調が感染経路になりうる、とは考えられています。 実際に上海市は2月9日に「オフピーク出勤推奨に関する通知」を出しました。内容としては、出勤時間をずらすことや、テレワークの推奨など感染機会を減らすために行って欲しい取組みについて求めるものでした。 そしてそこで「工場やオフィスでのセントラル空調の使用の停止」について求められていました。(※1) また5月6日に中国で開かれた新型コロナ感染予防・管理に関する記者会見では復旦大学付属華山病院感染科科長の張文宏教授は「セントラル空調は密閉型という特徴があるため学校におけるセントラル空調の使用を提案しない」とセントラル空調に対して述べました。(※2) しかしセントラル空調であっても外気から空気を導入し換気を行い、内部循環をオフにすることができるものもあるため、「絶対に使用してはいけない」というわけでもありません。 もし使うときは密閉にならないように換気を行っていきましょう。
4. 個別空調は安全…?
一方個別空調が絶対安全かというと残念ながらそうとも言い切れません。 一つの室内の中で空調を行う個別空調ですが、部屋内にウイルスが存在した場合、発生した気流によって飛沫感染を促しクラスターを形成するのではないかとの研究報告が米国のCDC(疾病予防管理センター)が発行するオープンアクセスジャーナル『新興感染症』(※3)に載りました。広東省広州市のレストランでクラスターが発生した事例についての研究報告でまとめられており、「早急に断定はできない」としていますが、「エアコンなどの空調設備によるエアロゾル感染にも気を付けたほうが良い」と注意を促しています。 個別空調であった場合も適度に換気を行う必要があります。
5.まとめ
今回、工場内で感染拡大を阻止するために空調の仕組みについて見ていきました。 最初に述べた通り感染を阻止するためにも工場の換気には十分注意を働かせる必要があります。 ①自社の空調がどちらの種類なのか ②セントラル空調の場合、内部循環をオフにすること ③個別空調の場合でも窓を開けるなど換気を行う これから夏になり空調設備を多用するようになるかもしれませんが以上三点について意識しましょう。 現在ウィズコロナ時代と言われていますが、多くの人が適切な対応をしていれば早く終わらせられます。皆さんで協力して乗り越えていきましょう!
参考文献・引用 ※1 朝日新聞デジタル2020年2月20日
(https://www.asahi.com/articles/ASN2B3386N29UHBI01B.html)
※2 人民網日本語版2020年5月12日
(http://j.people.com.cn/n3/2020/0512/c95952-9689466.html)
※3 CDC(疾病予防管理センター)Volume 26, Number 7—July 2020
(https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/7/20-0764_article)